D’Arienzo Cup 2025|いただいた声から、次の設計へ

D’Arienzo Cup 2025 にご参加・ご観戦くださった皆さま、
そしてアンケートにご協力くださった皆さま、本当にありがとうございました。

今回は、全51件のアンケート結果をもとに、

1)数字で見た D’Arienzo Cup
2)いただいたメッセージ(良かった点と改善点の両方)
3)審査結果の分析と今後の方針

をまとめてお伝えします。


目次

目次

  • 1. 数字で見る D’Arienzo Cup 2025
  • 1-1. 回答数と内訳
  • 1-2. 大会全体の満足度
  • 1-3. 項目別の評価(平均点)
  • 2. いただいたメッセージから見えたこと
  • 2-1. 予選を2回実施したこと(コメント:約10件)
  • 2-2. 会場・設備・導線について(コメント:約15件)
  • 2-3. 情報・アナウンス・タイムテーブル(コメント:10件以上)
  • 2-4. 音楽・DJ・音響(コメント:約6件)
  • 2-5. スタッフ・運営体制(コメント:10件以上)
  • 2-6. New Star・シニアカテゴリー・国際性
  • 2-7. 参加費・価格について(コメント:数件)
  • 3. 審査結果の分析と、これからの方針
  • 3-1. 異なる計算方法での再検証
  • おわりに

1. 数字で見る D’Arienzo Cup 2025

1-1. 回答数と内訳

合計:51件

・出場者:34名
・観客:8名
・スタッフ:9名

それぞれの立場から、率直で具体的なフィードバックを多数いただきました。


1-2. 大会全体の満足度

「大会全体の満足度(5段階)」の回答は以下の通りです。

・2:5件
・3:10件
・4:26件
・5:10件

・平均:3.80 / 5
・4〜5:36名(約71%)

立場別の平均は、
・出場者:3.88
・観客:3.00
・スタッフ:4.22

出場者・スタッフからは概ね高い満足度をいただきつつ、
「観客としての体験」には改善の余地が大きいことが見えてきました。


1-3. 項目別の評価(平均点)

・大会全体の満足度:3.80(4・5:約71%)
・会場(立地・広さ・床・音響など):3.59(4・5:約53%)
・案内・情報のわかりやすさ:2.86(4・5:約22%)
・音楽・音響の印象:4.02(4・5:約77%)
・スタッフの対応:3.82(4・5:約59%)

強み:
・音楽・DJ・音響
・スタッフの姿勢・対応

課題:
・事前案内・当日の情報設計(タイムテーブル・アナウンス・掲示)


2. いただいたメッセージから見えたこと

(良かった点と、同じテーマで出ている改善点)

ここからは自由記述コメントをもとに、
「良かった」という声/「改善してほしい」という声が両方出ているテーマを、件数も含めてお伝えします。

※同一の方が同じテーマを複数書いている可能性もありますが、
「同趣旨のコメントが何件あったか」の目安として集計しています。


2-1. 予選を2回実施したこと(コメント:約10件)

■良かったという声(おおよそ4件)
「予選は皆さんを見ることができるので良いと思います」
「予選を2回にする事、審査員が変わる事で評価が分散することも興味深く感じました」
「予選が2曲ずつ2回になって踊る機会が増えた感じで嬉しかった」
「J&Jの予選2回実施、予選が2回になった事がとても良かった」

→ より多く踊れること/評価が一部のロンダに偏りにくいことを好意的に受け止める声がありました。

■負担・改善を求める声(おおよそ5〜6件)
「予選2回は、正直とても疲れた」
「初参加の方を中心に、運用が分かりづらかった」
「申し込み後に公表されたので、事前に知りたかった」
「予選2回は正直J&Jだけでいい」
「予選2回なら、すぐ決勝ラウンドがよい」
「曲数で調整するべきで、時間を分けて2回目を行う必要は無いと思いました」

→ 体力的負担/タイムテーブルのタイトさ/告知タイミングへの不満も複数寄せられました。

【次回に向けて】
今回の「予選2回方式」については、ポジティブなご意見とネガティブなご意見の両方をいただきました。
この方式は、審査の公平性を高め、評価の精度を上げること、そして参加者のトライ回数を増やすことを目的に設計したものです。

一方で、今回は途中からの設計となり、事前告知のタイミングが十分でなかった点は申し訳ありませんでした。
次回は、目的と運用を事前に明確にお伝えしたうえで、カテゴリーごとの最適な方式も含めて、より良い大会設計にしていきます。


2-2. 会場・設備・導線について(コメント:約15件)

■良かったという声(数件)
「ミロンガ会場としての雰囲気が良かった」
「フロアが木の床でとても踊りやすかった」
「控室や更衣室があったのは良かった」
「空調は寒くなくて良かった(観客目線)」

■改善を求める声(10件以上)
・観客席が狭い/長時間の観戦が大変
・トイレの数が少なく行列(同趣旨:およそ6件)
・控室に椅子・机が少ない
・控室と大会フロアが別階で、観戦しづらい
・出入口や動線が混みやすい
・2フロア構成で上下階移動/アナウンス伝達が難しい

【次回に向けて】
今回の会場は、予算とのバランスの中で、前回大会よりもフロア面積を広げる設計を選びました。
その一方で、観客席・控室・トイレ・導線・上下階の連携といった「体験の設計」には改善余地があることも明確になりました。

いただいた声を真摯に受け止め、次回は会場選定の条件整理から行い、
レイアウト(観戦席/控室/掲示・呼び出し導線/アナウンスの届き方)まで含めて、改善していきます。


2-3. 情報・アナウンス・タイムテーブル(コメント:10件以上)

■良かったという声(少数)
「大会時の案内が細やかでよかった」
「1日目の夜に結果を公表してくれて助かりました」
「多くの説明をしてくれたこと自体はありがたかった」

■わかりづらかった/改善してほしいという声(多数)
・案内メールが五月雨式で見返しづらい
・当日どのロンダが並ぶべきか、アナウンスがはっきりせず混乱
・1日目からプログラムを開示してほしかった
・当日のタイムスケジュールを紙配布 or 会場内に大きく掲示してほしい(複数)
・Facebookが大会情報を探しづらい
・英語案内/アナウンスを増やしてほしい

【次回に向けて】
情報は「量」よりも、「見せ方」と「分かりやすさ」が大切だと痛感しました。
次回は、出場者用・観客用・スタッフ用に情報レイヤーを分け、必要な情報へ最短で辿り着ける導線を設計します。
あわせて、当日の進行状況(今どのカテゴリー/どのラウンドか)を会場内で見える化し、海外参加者に向けた英語案内・アナウンスも強化します。

またスタッフ側からも、「プログラムに“予選のロンダ構成(進行)”を載せた方が良い」という意見が出ており、
次回は掲載方法を含めて検討し、より迷いにくい運用へ改善していきます。


2-4. 音楽・DJ・音響(コメント:約6件)

■ほぼ全てポジティブな声
「音質がとにかく良かった」
「どのロンダも良い曲で楽しかった」
「有名曲とそうでない曲のバランスも良かった」
「音の大きさもちょうど良かった」
「ライブ配信の音もきれいで応援しやすかった」

一方で、
・有名曲がロンダによって少し偏っていた
・年代別カテゴリーでは“その時代らしさ”が分かる選曲も見てみたい
という要望もありました。

【次回に向けて】
D’Arienzo Cup のコアバリューである“音楽”は高く評価されており、
その上で「年代感」「多様性」をどう打ち出すかが今後のテーマです。


2-5. スタッフ・運営体制(コメント:10件以上)

■感謝・好意的な声(多数)
「運営の方々が一生懸命に動かれていたのが印象的でした」
「多数の部門を大きく押さずに進行させた運営力に脱帽」
「柔軟に最善を尽くしていたことが伝わった」
「スタッフのアテンドがスムーズだった」

■一方で出ていた課題(スタッフ自身の声も含む)
・スタッフの休憩・食事時間が足りない(特に1日目)
・一部の役割に負荷が集中しやすい
・上下階連携のため連絡手段(インカム等)が欲しい
・朝のブリーフィング/終わりの振り返りを両日やるべき

【次回に向けて】
スタッフの献身に支えられた大会である一方、負荷の設計には改善余地があることが分かりました。
スタッフ数・役割分担・休憩設計を含め、より持続可能な体制をつくります。


2-6. New Star・シニアカテゴリー・国際性

■New Star・シニア(コメント:10件前後)
【ポジティブ】
「New Star カテゴリーがあるのは素晴らしい」
「60代・70代、できれば80代も楽しく参加できる大会なら希望と目標になる」
「シニアカテゴリーに感動した。自分も長く続けたい」

【課題・ご提案】
「New Star のレベル感に幅があり、戸惑った」
「条件やチェック方法を明文化してほしい」

■国際色について(コメント:5〜6件)
【ポジティブ】
「海外からの参加者も多く、国際的な雰囲気が良かった」
「海外予選で全体のレベルが上がり楽しかった」

【懸念・問いかけ】
「活動形態の異なるペアの扱いを整理してほしい」
「大会のメッセージが、参加地域によって異なる受け取り方をされ得る」

【次回に向けて】
国際色を大切にしつつ、“アジア×日本のハブ”としての役割と、ローカル育成の両立を丁寧に設計していきます。
特に New Star については、申込時の確認項目を整備し、カテゴリーの趣旨に沿った運用ができるよう条件を明文化します。
また、活動形態の異なるペアの扱いについてもルールを整理し、参加者・観客の皆さまが納得感を持てる大会設計に向けて透明性を高めていきます。


2-7. 参加費・価格について(コメント:数件)

【ポジティブ寄り】
「規模・内容から、ある程度の参加費になるのは理解できる」

【一方での本音】
・複数エントリーだと高額に感じる
・参加費が高く、出場を控えた若手がいた
・物品の副賞を減らして、その分参加費を下げてほしい

【次回に向けて】
複数カテゴリー割引や、若手・学生向けの参加枠など、「価格と価値」のバランスは引き続き検討していきます。
一方で、昨今のインフレによるコスト上昇に加え、大会運営に必要な管理費(特に会場費)は年々大きな要素になっています。
参加者の負担感と、大会品質(会場条件・設備・導線など)をどう両立させるか――そのバランスを見極めながら、次回の料金設計と会場選定を進めていきます。


3. 審査結果の分析と、これからの方針

審査については、
・審査基準が分からない
・点数や項目が見えると練習の参考になる
・一部の審査に違和感がある
といった声をいただきました。

採点は大会の根幹であり、とても大切なものだと考えています。
そのうえで、あらためてアルゼンチンタンゴに対する認識を共有させてください。

アルゼンチンタンゴは、画一的な「型」を揃える踊りではありません。
音楽と抱擁を軸に、歩き方や間の取り方、身体の質感、パートナーとの対話――踊り手それぞれの背景や美意識が反映された“唯一無二のスタイル”が共存する文化だと、私たちは捉えています。

また、アルゼンチンタンゴはユネスコの無形文化遺産にも登録されています。無形文化遺産とは、形のある建築物などとは異なり、人々の「わざ」や「知恵」が生活とともに受け継がれ、時代とともに変化しながら育っていく――そんな“生きている文化”を保護し尊重するための枠組みです。つまりタンゴは、スポーツやスポーツダンスのように「正解の形」に寄せて競うものとは、根本の思想が異なる分野でもあります。

さらにタンゴには、ときに「ムグレ(汚れ)が必要だ」とも言われます。ここでいうムグレとは、乱暴さや不潔さではなく、完璧に整いすぎたフォームだけでは生まれない、人間味や陰影、街の匂いのようなもの。音楽の奥行きと抱擁の温度が立ち上がるための“余白”であり、タンゴがタンゴである理由のひとつだと私たちは捉えています。

そのうえで、D’Arienzo Cup の採点は「多様性が共存する」ことを前提にしています。タンゴには踊り手ごとの“中心(美意識・思想)”があり、その表現は基本的に各審査員に委ねられています。

同時に、競技会として共通の土台も必要です。音楽との結びつき、抱擁とコネクションの明瞭さ、歩行と軸の安定、ペアとしての対話、そしてフロアクラフト(安全性・品位)など――私たちはスタイルの優劣を決めるのではなく、こうした「共通の土台の上で、どれだけ説得力をもってタンゴとして成立しているか」を評価します。

結果として上位に入ったダンサー/ペアは、多くの基準を高い次元で満たし、その総合力が点数に反映された――そのように私たちは捉えています。

また、アドバイス(フィードバック)については、採点作業とは別の仕事だと考えています。採点は、限られた時間と条件の中で、同じルールのもとに順位や通過を決めるための「評価」のプロセスです。一方でアドバイスは、個々のダンサーの背景や目標を踏まえ、次の成長につながる視点を言語化する「育成」のプロセスであり、必要な観察の深さも、伝え方の設計も異なります。

そのため D’Arienzo Cup では、「採点」と「アドバイス」を同一の作業として扱わず、役割を分けて考えています。成長のための具体的なアドバイスについては、日頃指導を受けている先生に直接相談すること、またクラスやプラクティカで質問することをおすすめします。そのほうが、継続的に踊りを見てもらいながら、状況に合わせた最適なヒントを受け取れるからです。

そのうえで、競技会としての公平性と納得感をさらに高めるために、今回いただいた声を受け、大会後に審査結果の再分析を行いました。

3-1. 異なる計算方法での再検証

ペアTango・J&J・その他主要カテゴリーについて、通常の集計方法に加え、複数の方法で順位と進出を再計算しました。

その結果、
・予選→準決勝
・準決勝→決勝
・決勝の入賞・優勝
について、いずれも「進出・入賞の結果は変わらない」という結論になりました。

(※計算の詳細やカテゴリー別の分析は、技術的な内容も含むため「採点分析レポート第2弾」として改めて公開します)


おわりに

今回のアンケートから、はっきり見えてきたことがあります。

「内容(音楽・カテゴリー・国際性)は高く評価されている一方で、
情報設計・会場インフラ・予選構成・審査の“見せ方”には、まだ伸び代がある」

――ということです。

たくさんの「楽しかった」「感動した」という言葉と同時に、
厳しくも具体的なご指摘・ご提案をいただけたことを、心からありがたく受け止めています。
それは、この大会が“期待されている”という証でもあると感じました。

D’Arienzo Cup は、出る人にとっても、見る人にとっても、支える人にとっても、それぞれが誇りに思える場でありたい。
そのために、いただいた声を「次回の設計図」として、一つずつ形にしていきます。

今後とも、D’Arienzo Cup をどうぞよろしくお願いいたします。


GYU

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